はじめに

105月 - による HRS Happyman - 0 -
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whinty3s

2000年から2006年まで、3D-Whitneyというホイットニー・ヒューストンのファンサイトを運営していた。

当初は最新ニュースやツアーの様子を翻訳してアップ、サイトに来てくれた方たちとのコミュニケーションも楽しんでいたが、2005年からホイットニーのドラッグの問題が深刻化。元夫ボビー・ブラウンの暴力など、ネガティブなニュースが中心になってきたため、ニュースをアップデートするのを止め、その後サイトもクローズしてしまった。

その後のホイットニーの束の間の復活、映画「スパークル」の制作、そして2012年の第54回グラミー賞前日の突然の死までの経過は皆さんも既にご存知であろう。

これを読む方の中に、1985年デビュー当時のホイットニー、そして(「ホイットニー節」と日本のメディアに呼ばれたゴスペルにルーツを持つ)彼女のパフォーマンスを目撃した方はいるだろうか。

どこまでも伸びる高音と圧倒的なパワー。完璧なメロディーの解釈力とフレージング。歌詞と自分の感情を重ね合わせる才能。3オクターブのレンジ。

その笑顔といい、完璧なスタイルといい、マジ完璧。「彗星のように現れた」という表現がまさに当てはまる存在だったのである。

だが一方、爆発的な成功と同時に、大きな期待と責任を背負ったホイットニー。彼女は「家族」「宗教」「セクシャリティ」「ドラッグ」「音楽業界」「人種」がもたらす全ての矛盾の狭間に置かれていた。常に妥協を強いられた彼女は、自分自身を失って徐々に失速していった。

彼女が真に輝いた時期は短かく、これまで功績を軽視する意見は多かった。だが、ホイットニーはビヨンセやアリシア・キーズをはじめ、全てのアフロ・アメリカンの女性シンガーのために道を切り開いた真のパイオニアなのだ。

残念なことに死の直前はドラッグや財政問題など暗いニュースが多かった。メディアの説明といえば「ボビー・ブラウンとの結婚」「ドラッグ問題」ばかりで、一体何がホイットニーをドラッグへ走らせていたかの説明はなかった。彼女の若すぎる死がどうしても腑に落ちなかったファンも多いのではないか。

ホイットニーの死後、母親シシー・ヒューストンによる回想録、2本のメジャーなドキュメンタリー、そしていくつものTVスペシャルが製作・公開されたが、それでもホイットニーがなぜあれほど劇的に失墜したのか、多くの謎は解けないままだった。

インタビュー嫌いとして知られるホイットニーの残した言葉は非常に少ない。プライベートな質問は一切禁じられているインタビューも多く、どれも内容が似通っていてつまらない。彼女の本音が覗けるケースは稀である。

そんな中、沈黙を守ってきた親友ロビン・クロフォードが初めて綴った回想録「A Song For You – my Life with Whitney Houston」が2019年に出版され、知られざるホイットニーの素顔と苦悩に新しい光を当ててくれた。この著書がこれまで欠けていたジグソーのかけらをくれた感がある。

ドキュメンタリー『whitney』の中のコメントにもあったが、日本はドラッグ文化がないため、一線を超えたアーティストに対して非常に厳しい国だ。晩年に向け、彼女と日本のファンの関係が希薄になっていたのは残念だ。日本はホイットニーのお気に入りの国の一つだったから。

それにしてもホイットニーの存命中、アメリカが同性愛に関して今(2021年)と同じ位オープンだったら、ホイットニーはまだ存命していただろう。信じられないほどゆっくりだけれど、私達は少しづつ前進しているのだ。

彼女の死後10年近く経ち、ホイットニーの功績に対する称賛と彼女に対する同情が高まりつつある。特に毎年スーパーボウルの時期が近づく度に誇らしく感じるホイットニーのファンは多いだろう。1991年、湾岸戦争に際し、揺れるアメリカ国民の胸に勇気と誇りを吹き込んだ彼女のスーパーボウルの国歌斉唱。

ホイットニーを上回る歌唱を私たちはいつか聞くことができるのだろうか?その可能性は極めて低いと思われる。だとすれば、ホイットニーの歌をリアルタイムで経験できた私達は本当にラッキーなのだ。あれこそ語り継がれるべき伝説だ。

このブログではホイットニーのレアな音源紹介、ミュージシャンやシンガーを目指している方の為の記事から、古いインタビューまで、幅広い内容をカバーしている。その全てがホイットニー・ヒューストンの才能とヒューマニティ、そして偉大な功績を理解するのに繋がってくれれば幸いである。

ビヨンセや他の黒人の女性アーティストがチャートのトップを飾る、そんなことはホイットニーがデビューするまで決して起きなかった。当時、黒人女性アーティストのために歴史を変えたのがホイットニーだった。そしてその代償を払ったのも彼女だった。

それなのに、この世界に彼女が残した貢献について
感謝する気持ちは、一体どこにあるの?」

ー パティ・ハワード(バックグラウンド・シンガー)」

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HRS Happyman