超一流エンジニアも仰天・「恋は手さぐり」レコーディング秘話

26月 - による HRS Happyman - 0 - ボーカル徹底解説
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ミュージック・プロデューサー、ナラダ・マイケル・ウォルデンがプロデュースしたホイットニー・ヒューストンの2枚目の全米No.1シングル、「恋は手さぐり(How Will I Know)」。

80年代ならではのカラフルさとホイットニーのパンチの効いたボーカルが楽しめる究極のパーティ・チューンである。

ジョージ・メリルとシャノン・ルビカムによって書かれたこの曲、もともとジャネット・ジャクソンのアルバム「コントロール」の為に書かれたものだったが、他の曲と比べてインパクトに欠けるという理由で却下されてしまった。

「僕たちはかなり頭に来ていたよ。もともとジャネットをイメージして書いた曲だし、当時のジャネットにぴったりの曲だと自信があったんだ。」とあるインタビューでメリルは語っている。

当時ホイットニーのデビュー・アルバムのために曲集めをしていたA & Rのジェリー・グリフィンは曲を聴き、ホイットニーのボーカルに絶対にマッチすると確信。曲を聴いたクライブ・デイビスも即座に気に入り、すぐにレコーディングが決定。

「(アルバム用に)R & Bタイプの曲の候補はすでに沢山あったし、バラードも何曲か集まってきていたが、ポップ・オーディエンス層にクロスオーバーできる曲がなかったんだ。『恋は手さぐり』を聴いて、『この曲は(クロスオーバーに)完璧だ』と思ったのさ。」

当時アレサ・フランクリンのアルバム、「Who’s Zoomin’ Who?」の制作で忙しかったナラダだがジェリー・グリフィンに押し切られ、ホイットニーのプロデュースを渋々引き受け、ボーカル録りを含めてなんと4日間で曲を完成させてしまった。

ジェリー・グリフィスは語る。「ホイットニーのママ、シシーがスタジオにこの曲のバックグラウンド・ボーカルをレコーディングに来たんだ。

僕は『ホイットニー、君もックコーラスに加わったらどうだい?」と聞いたんだ。母親のコーラスを聞きたがって、最初は嫌がったんだけど、最後にはホイットニー本人も加わって歌った。ホイットニー本人が加わったことで、あの曲のバックグラウンド・ボーカルは更に素晴らしいものに仕上がったよ。

ミックスした曲をクライブ・デイビスに聞かせたら、なんと10点満点中10点をくれたんだ。これってとんでもないことなんだぜ、クライブは普段だと、何を聞かせても気に入らないからね。(笑)

イギリス人監督ブライアン・グラントによって制作された、カラフルで躍動感のあるミュージック・ビデオは当時のMTVでもヘビーローテーションされ、ホイットニーをポップ・アーティストとして強力にアピール。

ここではナラダ・マイケル・ウォルデンの著作、「Whitney Houston: The Voice,  The Music, The Inspiration」より、「恋は手さぐり」レコーディング・エンジニアのマイケル・バルビエロがホイットニーの声に仰天した際のエピソードをご紹介。

因みにマイケル・バルビエロはアレサ・フランクリン、ミック・ジャガー、ジョン・レノン等のアーティストとの仕事を経験した一流プロデューサー/エンジニアとして有名。


Whitney Houston “ The Voice,  The Music, The Inspiration”
Narada Michael Walden
Translated  by HRS Happyman

「『恋は手探り』のレコーディングでホイットニーに初めて会った時、僕はホイットニーのゴージャスな美しさにノックアウトされたよ。ブース入りした彼女に、まずは曲を通して歌ってくれるようお願いしたんだ。彼女の声のバランスをチェックするためにね。

コントロール・ルームに戻ったらナラダ(・マイケル・ウォルデン)が言うのさ、『マイク、これはただのサウンドチェックじゃ済まないぜ。何をするにせよ、彼女の声を絶対にキャッチしてほしい。俺の勘では、歌録り一発で済む気がするんだ』

ナラダがホイットニーと仕事をしたのはその時が初めてだったけど、この世を超越しているナラダのことだから、何かピンと来たんだろう。僕はナラダの言うことに従ったんだ。

ブース内のホイットニーにサウンドチェックの準備はいいか、と声を掛けたら、彼女がイエスと答えたんだ。そして僕は彼女には伝えずに、こっそり『録音』のボタンを押したのさ。

ホイットニーが歌い始めた途端、僕は自分の耳にしているものが信じられなかった。

彼女は素晴らしい歌声を持っているだけでなく、音楽に自分の声を見事にブレンドする、特別な才能があるんだ。だからコントロール・ルームで彼女の歌聞いていると、まるで完成されたレコードを聴いているように感じるのさ。

これが現実に起きていることとは信じられなくて、ブースの中で歌っている彼女から目が離せなかったよ。

『サウンドチェック』を終え、ホイットニーが『オッケー、私はいつでも歌えるわ!』と叫んだ時、ナラダはこう答えたんだ。『ハニー、録音はもう済んだところだよ』

出典:
Whitney Houston “ The Voice,  The Music, The Inspiration”
by Narada Michael Walden
Translated  by HRS Happyman

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