「ジャスト・ホイットニー」クライブ・デイビスの関与なしで作られた唯一のアルバム

105月 - による HRS Happyman - 0 - アルバム
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just whitney
whitneyhouston.com

Just Whitney | Whitney Houston (2002)

1. One Of Those Days 2. Tell Me No 3. Things You Say
4. My Love (Ft. Bobby Brown) 5. Love That Man 6. Try It on My Own
7. Dear John Letter 8. Unashamed 9. You Light Up My Life Lyrics
10. Whatchulookinat

全世界の販売枚数:200万枚
全米の販売枚数(RIAA):100万枚
米ビルボード200最高位:9位
米ビルボード200にチャート・インした週数:30

2002年11月25日、ホイットニーにとって5枚目のオリジナル・アルバム、「Just Whitney」がリリースされる。ホイットニーのカタログの中で最もレビューが難しいのがこのアルバムだ。好きとか嫌いとか言いようがない。ホイットニーの人生が問題だらけだった頃の作品で、聞く気にならない唯一のアルバムである。

批評家からの評価も当然ながら芳しくない。ローリング・ストーンズ誌はこう評価している。

「ホイットニー・ヒューストンのキャリアは夫ボビー·ブラウンとの結婚生活と共に衰退している。彼女が音楽に費やす時間が年々短くなってきているようだ。1998年にリリースした『マイ·ラヴ·イズ·ユア·ラブ』ではホイットニーは炎のような自らの結婚生活から素晴らしい作品を生み出すことができた。だが本作には炎と呼べるようなものが全くない。

アルバムの中で最も残念なのは『You Light UpMyLife』での彼女の歌声だ。『I will Always Love You』で、ホイットニーはクラシックな歌を自分自身のものにする才能を示したが、このカバーは、ホイットニーがかつての自分に到達しようと無駄な努力をしているだけだ」

私もここで書かれたことに同感する。このレコードを聞いて気付くのは、ホイットニーの声の更なる劣化である。

このアルバムのレコーディングの様子がドキュメンタリー「Whitney」のなかに数シーン出てきて、A & Rのジョーイ・ガスキンによって、当時のホイットニーの様子が語られている。「(ホテルの)部屋まで迎えに行くと、出てきたホイットニーは、明らかに痩せてしまっているんだ。『ニッピー、温かいスープでも一緒に買いに行こう』って声をかけたよ」

2001年にLAリードがアリスタに就任以来後、当時の史上最大1億ドルのアリスタとの契約を交わし、初のリリースとなるのが本作。クライブ・デイビスの関与なしで作られた唯一のアルバムである。発売第一週目の出荷数は20万枚を超え、彼女のキャリアの中でも当時最大であった。アメリカで100万枚、全世界で250万枚(2020年時点)のセールスを記録した。

プロデューサーはベイビーフェイス、ディスティニー・チャイルド等のプロデュースでしられるシェイクスピア・ビッグス、ミッシー・エリオット、テディ・ビショップなど。そして夫のボビー。噂されていたジャム・ルイス&テディ・ライリーとのコラボは実現しなかった。結果的には『パーソナルなホイットニー』をコンセプトに、R&Bとポップのバランスのとれたカタログ的なアルバムに仕上げられている。

ちなみにアルバムについてホイットニーはとあるラジオ番組でこう語っている。「このアルバムは自分がサバイブしていくこと、家族を育てること、そして同時に妻であり、女友達でいることの意味、そうした全てが人生にもたらすチャレンジについてのアルバムなの。だからこの曲が具体的にどうこうよりも、ムード作りに向いた曲が多いわ」


メディアの評価は概ね否定的


前作と比べ、本作は商業的な失敗作となった。度重なるアルバムリリース・スケジュールの変更、ホイットニー本人によるプロモーションは数える程、ドラッグの使用を認めたダイアン・ソイヤーによるプライム・タイム・インタビュー、発売前にインターネットにアルバム全曲が流出してしまったこと、そしてライブ番組で歌うホイットニーの声のコンディションも不安定だったこと。様々な要因がこのアルバムの成功を難しいものにしていた。

この時期、ホイットニーのドラッグの使用は更に深刻化。レコーディングの目的で滞在中であるにも関わらず、ホテルの部屋から一週間以上出てこない。レコーディングもドタキャン。このアルバムの制作に際してホイットニーが無駄にした経費は500万ドル以上に登ると言われる。

気が重いが、2000年以降のホイットニーについて振り返ってみよう。

ー 2000年1月ハワイの空港でマリファナ所持が見つかる。(捕まる前に飛行機で逃げたので罪状はあるが逮捕はされなかった。後にケースは取り下げられた)

ー 2000年2月、第42回グラミー賞にて、「It’s Not Right but It’s Okay」が最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス賞を受賞。声の調子イマイチ。

ー 2000年3月6日、ロックの殿堂授賞式でクライブ・デイビスへのトリビュートとして歌う予定だった。自分で引き受けたくせに直前にドタキャン。クライブは大落胆である。

ー 2000年3月26日オスカー授賞式で作曲者バート・バカラックへのトリビュートとして「Over The Rainbow」を歌う予定であったが、リハーサル中の振る舞いがマトモでなかったため、バート・バカラック本人にその場でクビにされる。

ホイットニー、一生の汚点である。メディアは大騒ぎ。この時まだホイットニーはドラッグの使用を公に認めていなかったから、一体彼女に何が起きているのか誰にもわからなかった。だがこの時期に、ホイットニーのことをデビュー以前から支えてきたロビン・クロフォードが彼女の元を去っている。

その2週間後、ホイットニーはアリスタ25周年記念スペシャルの収録に登場する。オスカーをクビになった直後のホイットニー、一体彼女はまだ歌えるのか?全世界が彼女の喉のコンディションに注目。ファンはホイットニーのパフォーマンスをするか固唾を飲んで見守った。ところがそこは負けず嫌いのホイットニー、メディアの関心を嘲笑うかのような力強いパフォーマンスを届けたのである。(放映は5月)

ー 2000年5月、ボビー・ブラウンが飲酒運転で逮捕される。ファミリー・バケーション先のバハマから戻った際のこと。7月にボビーが出所の際、ホイットニーは白のリムジンで出迎え、その腕に飛び込む。その姿が話題になる。

ー 2000年9月ニューヨークのボクシングの試合にて「God Bless America」をソウルフルに熱唱する。(2000年代最高のパフォーマンスの一つか)

ー 2001年9月マイケル・ジャクソンデビュー30周年記念コンサートに参加するも、激ヤセ振りに数日後死亡説が流れる。

https://youtu.be/K6QC3MFvUks

ー 2001年9月11日、アメリカ同時テロに際し、ホイットニーがスーパーボウルで歌った「The Star Spangled Banner」が再リリースされる。全米ビルボード・チャートで6位をするヒットを記録。収益はテロの被害者や消防職員へ赤十字を通じて寄付された。マイケルのコンサートの直後の話で、メディアは彼女の痩せた体の話で持ちきりだったため、ファンはこのニュースを喜ぶ気持ちになれず複雑な心境であった。

ー 2002年5月23日、ラスベガスで開催された‘Divas Vegas」、メアリーJ. ブライジがヒット曲、「Rainy Dayz」のパフォーマンス中にホイットニーがゲスト登場。激ヤセで話題になった後の初のパフォーマンス。ファンはハラハラしっぱなしだった。声のコンディションはさておき、ホイットニーが珍しく皆の前に姿を見せ、オーディエンス感激。メアリーも飛び上がって喜んでる。

ー 2002年8月、父親ジョンが1億ドルの支払いを求め、ホイットニーを訴える。世間は仰天である。ドキュメンタリー「Whitney」にもあるが、ジョンはホイットニーのキャリアがスタートした段階から巨額の金を盗み続けていた。その事実が何かの理由で2000年前後に発覚し、ホイットニーは父親ジョン(ジョンはホイットニーのマネージメント会社の社長を務めていた)をクビにしていた。

モウロクして欲に頭が眩んだ父親ジョンの失態。ホイットニーは元々父親っ子だった。父親の訴訟は家族の恥以外のなにものでもなく、既に様々な問題の渦中にあったホイットニーに更なる精神的打撃を与えた。

ー 2002年11月25日、ホイットニーにとって5枚目のオリジナル・アルバム、Just Whitneyがリリースされる。

ー 2002年11月、ABC ネットワークのプライムタイム・インタビューに出演。初めてドラッグの使用を認める。ホイットニーの言った「クラック・イズ・ワック」が話題になる。(インタビュー全訳は下のリンクをご覧ください。)

インタビューに続いて「グッド・モーニング・アメリカ」で放映されたホイットニーの野外パフォーマンス。喉の調子はイマイチだが、それでもホイットニーならではスリルとエネルギーがこのパフォーマンスから見受けられる。ステージングもユーモラスで中々だ。オーディエンスの反応も悪くない。

ー 2003年2月3日 ホイットニーと関係をする前に、父親ジョンがニュージャージーで死亡。ホイットニーに大きな打撃を与えた。

出典:whitneyhouston.com

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