「ラン・トゥ・ユー」ホイットニーの絶唱バラード誕生秘話

105月 - による HRS Happyman - 0 - 記事・インタビュー日本語訳
Pocket

Run To You (The Bodyguard: Original Soundtrack) | Whitney Houston (1993)

世界中で大ヒットしたサウンドトラック、『ボディーガード』からの名バラード、「ラン・トゥ・ユー (Run To You)」 。究極の美メロと、彼女のダイナミックな歌唱に卒倒した人も多いことだろう。

この記事の中ではソングライターのコンビがどうやって曲を書き、プレゼンテーションをしたのか、そしてその曲がホイットニーのもとに届くまでのプロセスが、詳細に綴られており興味深い。ソングライターを目指す方は必見だ。


SongwriterUniverse
Jud Friedman & Allan Rich: Writing “Run To You” for Whitney Houston

By Dale Kawashima
Translated By HRS Happyman

多くのポップ・ソングライターにとって、究極の夢はスーパースターの大成功作に、自分達の作品が採用されるという事であろう。かなう事自体が稀な夢なのだが、ジャッド・フリードマン(Jud Friedman)とアラン・リッチ(Allan Rich)には奇跡が起こった。

このロス在住の二人組はこの十年(注:当記事は1999年に発表)で最も売れ、最も有名なアルバムであるホイットニー・ヒューストンの『ボディーガード (The Bodyguard)』サウンドトラックに彼等の曲「ラン・トゥ・ユー」を収録させる事に成功したのである。最近のインタビューで彼等はこの曲にまつわるストーリーを回想した。


どのようにこの曲を書いたのか。どうしたいきさつでこの曲が使われるようになったのか。映画の内容に沿わせる為、どのように曲の全体を書き直さねばならなかったのか。

そして、ホイットニー・ヒューストンがその歌をレコーディングするのを目撃した瞬間、アルバムが大ヒットになるのを見守っていた時、彼等が感じた言葉にならないほどの喜びについて。

ホイットニーのレーベル、アリスタ・レコードでは、ソングライターや音楽出版社にアリスタがこのサウンドトラックのために曲を必要としている、と告知していた。アリスタは具体的にホイットニー用に4曲のキー・ソングを必要としていて、それはそれぞれ異なったシーンで使われる事になっていた。

「そのプロジェクトはとてもオープンだったから、あらゆるソングライターが、母親たちと一緒になって(笑)、自分たちの曲をホイットニーに歌ってもらおうと、できる限りの努力をしているみたいだった。

僕達は具体的なシーンを想定しないで、とりあえず別れのタイプの曲、つまり、愛しているけれど、あなたは離れて行くってテーマのものを考えていたのさ。」

リッチは「ラン・トゥ・ユー」の作詞に取りかかった。「その当時、僕自身の生活の中でも別れを経験していたときだったから、それが自分の感じたものを反映した詩を書かせたのかもしれないね。僕は詩を数日で書き上げて、それをジャッドのところへ持って行ったのさ」

「アランはこの曲のために素晴らしい詩を書いた、と僕は思った。すぐに僕はキーボードの前に座って、メロディーを作り始めたのさ。」とジャッドは言う。

「僕が大方メロディーの方は書いて、最後に二人でこの曲を仕上げたよ。曲が仕上がった時、ごくシンプルなデモテープを作ったんだ。ピアノと、ギターとストリングスのサンプルを使ってね。

それから、このデモを歌ってもらうのに、素晴らしいシンガー、ヴァレリー・シンプストンを呼んだのさ。彼女はこの曲をそれは美しく歌ってくれたのさ。だから、僕ら二人はこの曲の出来栄えにはとても満足していたんだ。」

デモを送ってから間もなく、リッチは彼の留守番電話に短いメッセージを見つけた。「すごいメッセージをもらったんだよ。今でもそのテープはとってあるんだ。ある日家に帰ったら、留守番電話にこういうメッセージが入っていたのさ、

『アラン・リッチさん、こちらはクライブ・デイビスです。この報告を気に入ってもらえると思うんだが。ホイットニーも私も君たちの曲「ラン・トゥ・ユー 」がとっても気に入っています。すぐに連絡を下さい。』で、僕は飛び上がってしまったのさ。」

すぐにリッチはクライブに電話をかけ、この素晴らしい知らせを確かめた。のちに「ラン・トゥ・ユー」はクライブとホイットニーの許可だけでなく、映画の監督であるミック・ジャクソン、プロデューサーであり、主演俳優でもあるケヴィン・コスナー、そしてワーナーの社長である、ゲイリー・リメルからもGOサインを貰った。

「メジャーな映画やそのサウンドトラックとなると、とにかく沢山の人からOKをもらわなけりゃならないのさ」とフリードマンは言う。 

「全ての事がおさまるべき場所にぴったりはまらなきゃダメなんだよ。全てがうまくいって、僕達は本当に幸運だったと思うよ。」

ところが一か月後、彼等のもとに映画監督であるミック・ジャクソンから電話が入った。「監督のミックがこう言うのさ、『僕らは君の曲がとても気に入っているよ。でも少しだけ気になる事があるんだ。』」とジャッドは回想する。

「もう僕は既に手に汗をかき始めてた。ミックは言うんだ、『僕達は曲が気に入ったけど、主人公たちが破局してしまう後半ではなく、恋に落ちる前半にそれを使いたいと思っているのさ。だから、この曲の詩を別れの歌じゃなく、ラブ・ソングに変えてくれないかな?そんなに大変な事じゃないだろ?』」

「もちろん答えたよ、『やります!』電話を切ってから、実はショックで床にへたり込んじゃったんだ。僕達の作詞/作曲家としての運命がかかっていた訳だし」

『ようやく起き上がって、クライブに電話をかけたんだ。彼は言うんだ、”私はこのバージョンが気に入っているよ。ヒットの可能性を持っている曲だ。そうだな、詩の書き直しをやってみたらどうかね。何をするにせよ、この曲のヒット性をフイにしては駄目だ。

もし書き直しがうまく行かなかったら、私たちは将来のホイットニーのプロジェクトにこの曲を使う事もできる。例えばグレイテストヒット・アルバムとかね』」

「電話を切ってから、二人で話し合ったんだ。『このチャンスを絶対に逃す訳に行かない、ホイットニーに曲を書く機会なんて僕達の人生にもう来ないかもしれないんだって。このチャンスをしっかりモノにしなくっちゃってね。』

二人はタイトル以外、全ての歌詞を書き直した。彼等は曲のデモを作り直し、新しいバージョンをクライブ・デイビスのもとに送った。クライブ、ミック・ジャクソン、全ての関係者が新しいバージョンのこの曲が気に入った。「ラン・トゥ・ユー 」は映画に使われる事に正式に決まったのである。そしてついにホイットニーがこの曲をレコーディングする時が来たのだ。

出典:SongwriterUniverse

ホイットニーがスタジオにやってきたのは金曜日の夜だった。彼女に会えるなんて、そして彼女と仕事ができるなんて、本当に感激だったよ。彼女はまさにプロフェッショナルだった。実際、彼女はその時風邪を引いていてね、彼女の声もかすれて、まるでささやいてるみたいだったんだよ。

でも一旦彼女が歌い出したら、その声はまるで信じられないくらい
素晴らしかった。アレンも僕にとっても、あのホイットニーが自分達の曲ににあんなに美しく命を吹き込むのを目撃したのが、人生のなかで一番信じられない出来事の一つだよ。

「特にアルバムのメイン2曲、『オールウェイズ・ラブ・ユー(I Will Always Love You)』 と 『アイム・エブリ・ウーマン(I’m Every Woman)』の両方がリメイクだった事を考えると、外部のソングライターが曲を提供できる枠は本当に限られていたのさ。実際、僕達の曲がその一つに選ばれたのは奇跡みたいなものだね。

もちろん僕達は一生懸命頑張ったんだし、この曲については本当に誇りに思う。でも僕達はそれについてはあまりエゴは無いよ。

この過程についてはむしろ、謙虚に感じていたよ。だって僕達二人とも、自分達の歌が信じられないほどの競争率の中から選ばれたんだって知っていたからね。」

出典:SongwriterUniverse
Jud Friedman & Allan Rich: Writing “Run To You” for Whitney Houston

By Dale Kawashima

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です