『フツーの人間でも上手く歌えるコツはありませんか』1995年インタビュー中にホイットニーが与えたアドバイスとは
シンガーを目指す者なら誰でもお気に入りのスターから個人レッスンを受けてみたい。そのスターがもしホイットニーだとしたら?
1995年、出演作二作目の映画『ため息つかせて』のプロモーション中、ホイットニーが様々なインタビューに出演していた頃のこと。上のインタビュー(タイトルにはラジオ・インタビューとあるが、あるファンはこれはテレビ局によるインタビューと断言)の中で、シカゴ・トリビューンのジャーナリスト、ジーン・シスクル(自称音痴)はホイットニーから直々に歌のアドバイスを得るという極めて稀なチャンスに恵まれた。
「ホイットニー・ヒューストンのキャリアに偉大な成功をもたらしたものはあの『声』。彼女に聞きたかったんだ。『僕のようなフツーの人間でも上手く歌えるコツはありませんか』ってね」
それに対してホイットニーはこう答えている。「『歌う』とは、横隔膜で作り出した空気の流れを使って、声帯の作り出した振動を「頭の中に響かせる」までを指すの。喉や声帯ではダメよ。だから意識しなければならないのは、喉の周りでなくここ。(腹部とおでこを指差す)」
確かに歌のトレーニング経験がないと感覚が掴みにくい部分だ。ジーンは続ける。「ではワタクシ恥をしのんでハッピー・バースデーを歌ってみますので、アドバイス頂けますか?ハッピーバースデー、トゥー・ユー、ハッピーバースデー、トゥー・ユー」
歌い始めたジーンは「確かにあなたのいう通りだ!歌い出した途端に自分が喉で歌ってる、響きが喉で止まっていることに気がつきました。これじゃダメですね。」
「そう、意識しなきゃいけないのはここ(おでこを指差す)もう一回歌ってみて」
「ハッピーバースデー、トゥー・ユー、ハッピーバースデー、トゥー・ユー」
「どう?響きを頭に感じた?」
「いや、響きが喉に残っているのを感じました。感覚を掴むまでちょっとかかるかもしれません」
するとホイットニーが。「ちょっと声が枯れていて申し訳ないけれど」と咳払いしながら、見事なハッピーバースデーソングを披露。
「ハッピーバースデー、トゥー・ユー、ハッピーバースデー、トゥー・ユー
ハッピーバースデー、どこかの誰かさん
ハッピーバースデー、トゥー・ユー!
私は(声の響きを)頭の中に感じるわ。私は声帯で作られた振動をサウンドに変化させ、それを頭の中まで伝達しているのよ」
うーん、つまり僕がやらなくちゃいけないのは、と考えながらジーンはゆっくり歌い始める。
「ハッピーバースデー、トゥー・ユー、ハッピーバースデー、トゥー・ユー」
確かにジーンの歌声には明らかに前回にない響きが加わっている。
「どうです、良くなりましたか?」と意気込んで尋ねるジーンにホイットニーは優しく微笑みながら(映像がないので勝手に想像)「ずっと良くなったわ」。先生肌のホイットニー、わずか数分のインタビューの間にジーン・シスクルの歌声を改善したのである。