ホイットニー・ヒューストン、知られざる声の故障 Part 1 1991年2 月 HBO スペシャル

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ホイットニー・ヒューストンはキャリア後半、ボーカルの問題にしつこく付きまとわれたが、意外にも1991年の国歌斉唱の直後に声の不調を経験している。ロビン・クロフォードの著作「A Song For You」にその様子が描かれている。

1991年2月、ホイットニーは3月末に放映予定のHBOスペシャル「ウェルカム・ホーム・ヒーローズ」に向けリハーサル入りしていた。国歌斉唱パフォーマンスの直後でその興奮も冷めやらず、ホイットニー初のフル・コンサート放映に大きな話題が集まっていた時期である。

プロデューサーのナラダ・マイケル・ウォルデンによると、ホイットニーはウォームアップ代わりにディオンヌ・ワーウィックの「ウォーク・オン・バイ」や「アルフィー」などの曲を極くソフトに歌うことが多かったという。この日サウンドステージに立ったホイットニーはスティービー・ワンダーの「If It’s Magic」を歌いながらボーカルを温めていた。するとこれまでなかったことが起きた。フレーズの途中で急に声が裏返ったのである。

ホイットニーの声の特色の一つは地鳴りのような低音から天に届くようなファルセットまで滑らかに移行できる柔軟性にある。だが今日のホイットニーの声にはそれがなかった。まるで歩いている際にポコンとつまづいた感じだった。

ホイットニーは体を伸ばしてリラックスさせた。そしてもう一度そのフレーズをトライした。するとまたその声はひっくり返ったのである。加えて彼女の声の高音部に宿る特有の甘さが失われていた。心配な状態だった。ホイットニーはステージを降りて、最寄の控室に姿を消した。

急遽ドクターがリハーサル・スタジオへと呼ばれた。ドクターはホイットニーの喉を調べ、声帯の一部に損傷を見つけた。直ちに歌うのを控える必要があった。「問題なく治癒すると思いますが、直ちに歌うのを止めて喉を休めなければなりません。」とドクターは助言し、マスクと吸引器を渡した。

デビューして5年、これまで喉への負担により声が掠れたり、炎症を起こしたことは何度もあったが、こうした損傷は初めてだった。ドクターが去った後、ホイットニーはリハーサルに戻った。初めはミュージシャン達の演奏を聞いていたが、そのうちバックボーカリストの方にサインを送るとマイクに近づき、リハーサルに加わった。ホイットニーはドクターのアドバイスを無視したのである。

まだ20代のホイットニー、声の問題を経験しても極めて順調に回復した模様だ。ホイットニーはわずか数週間後のHBO ライブで見事なボーカルを披露。

”A Song For You: My Life with Whitney Houston”
by Robyn Crawford




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