有名コメディアンが語る、ホイットニー・ヒューストンが彼の家族を救った日

Text & Translation by HRS Happyman
パフォーマンス中に半裸になることで有名な(!)コメディアンのバート・クレイスチャー (Bert Kreischer)。彼にはホイットニー・ヒューストンについて特別な思い出がある。
バートの長女ジョージアが顎の骨を骨折した時のことだ。ジョージアは当時4歳で上顎の歯は全て折れており事態は深刻だった。翌日ビバリー・ヒルズの著名な歯科クリニックに朝の6時に娘を連れて駆けつけたバートと妻のリアン。そのドクターは高額で知られており、当時のバートにとても支払える余裕はなかったが、娘の状態を思うとためらいの余地はなかった。
クリニックが開き、麻酔医がジョージアを診るとバートにつげた。「血管が細くて見つからないんです。麻酔用ガスを使いましょう」麻酔ガスは幼い子供には大きな危険につながることもある。麻酔医は吸引マスクをジョージアに手渡すとバートにこういった。「急に吸い込まないで落ち着いて(麻酔用ガス)を吸い込むように伝えてください」
一方30代半ば、まだ父親として経験が浅かったバート。娘に起きた出来事に内心大きなパニックに陥っていた。バートはジョージアにこう言った。「さあ、マスクをつけたらゆっくり息を吸い込むんだ。一気に吸ってはダメだよ」
すると娘のジョージアは父親を見上げてこういった。「ダディ。もし私の目が覚めなかったらどうなるの?」その言葉にバートの心臓に鋭く刺さった。「それはいい質問だ。それはいい質問だ...とにかく早く眠るんだよ!」娘の質問から逃げるように施術室を飛び出たバートは人前も気にせず号泣し始めた。そして泣き始めたら止まらなくなった。

今やロビーにいる全員が仰天して取り乱れたバートを見守っている。バートは通りかかったスタッフに「もし娘が死んだら、その体を自分達で家に運ばなければならないんですか?」といった支離滅裂な質問をし、スタッフは驚いて目を剥いた。「いったい何のことですか?』
向いに座っていた黒人女性が、バートの目を覗き込んで落ち着くように諭したが、その言葉は余裕をなくしたバートの耳には入らなかった。
しばらくすると歯科医がロビーに現れて「手術は成功しました。娘さんは大丈夫ですよ」と告げるした。その途端にロビーの皆が拍手をし始めた。安堵によりまたしても大泣きするバート。急いで待受室に向かうと口にガーゼを詰め込まれた娘が妻の膝の上で寝ていた。
すると待受室のドアが開き、先ほどの黒人女性が姿を現した。ホイットニー・ヒューストンだった。ホイットニーはバートに近づくとその肩に手を置いた。「父親の役目も大変ね」そう囁くと、妻のリアンとジョージアの隣に座り、ジョージアの髪を時折撫でながら10分ほど二人と会話した。ジョージアに向かって小声で歌いかけ、リアンと子供を育てることがいかに難しいかについて話し合った。
そこに歯科医が現れホイットニーに尋ねた。「ミス・ヒューストン、あなたのボディーガードのケビン(・コスナー)はどこにいるんだい?」するとホイットニーは「いいから早く私を麻酔で眠らせて頂戴!」と言い返し、二人は待受室を出ていった。
ことの次第に今だに呆然としているバートが支払いの相談に向かうとスタッフはこう告げた。「ミス・ヒューストンが全てお支払いになりました」バートは仰天した。アメリカでは特別な歯科治療は非常に高額なものになる。「簡単には抜け出せない、大きな借金を作るところだったんだ。ホイットニー・ヒューストン。天国の彼女に神様の祝福がありますように」
周囲によればホイットニーは自身のチャリティー活動に加え、生涯を通じて様々な寄付やこうした援助を数多く行ってきたが、その殆どは公にされていない。彼女の死後、こうした話が少しづつ語られ始めている。善行を自らの宣伝に使うセレブリティが多い中、ホイットニーはそうした見せびらかしを好まなかった。バートの年齢を考えると2007年から2008年の出来事と推察されるが、ホイットニー自身の財政的な問題が報道されていた頃の話である。
参考:Comedian Bert Kreischer Shares the Unexpected Way Whitney Houston Helped His Family
https://people.com/comedian-bert-kreischer-shares-unexpected-way-whitney-houston-helped-his-family-exclusive-11707957